お客様のなかに

京都にむかう新幹線の中。 「11号車に急病人の方がいらっしゃいます。どなたかお医者様か看護士の方はいらっしゃいませんでしょうか?」 9号車の車両の中に急ぎつつも落ち着いた声でアナウンスがながれた。

「再度お願い申し上げます。ご乗車のお客様の中に・・・・」

2度目の放送が終わるくらい。9号車のドアが開く。スラッとした、髪の毛をぴしっとした、うっすら茶色ジャケット、50代半ばの男性がセカンドバックを脇に抱えて11号車方面へむかった。雰囲気からトイレに行く人ではないとすぐにわかった。15分後、その男性が戻って来た後に病人の方が安静にむかったというアナウンスがながれる。

すばらしい。これぞ仕事ではないでしょうか。
写真家の立場でこのくらい必要とされる事があるのでしょうか。

「7号車のお客様が急に七五三のお祝いになってしまいました。ご乗車のお客様の中に写真家の方はいらっしゃいませんでしょうか?」
「4号車のお客様がお持ちのお気に入りのアイスがドンドン溶けてしまいます。どうにか溶ける前にブツ撮りをして下さる写真家の方は・・・・」

写真を撮ってくださいと言われたら、グダグダ言わずに今ある現状の中でベストをつくして撮影できる人になりたいと9号車に乗る写真家は思いました。